コロナ以後のここ数年で、ライフスタイルや働き方が大きく変化した方は、結構多いと思います。
私の周りでも、地方に移った人、二拠点生活を始めた人、リモートワークに移行した人など、振り返ってみれば、いろんな方がそれぞれの変容を進めています。
同時に、地方で農業に触れる機会を作りつつ、オンラインも活用した新しいコミュニティづくりに取り組んでいる友人や知人も増えた気がします。
社会的な視点で言えば、東京一極集中からの脱却、ということにも繋がるのだと思いますが、中央に集約されていたものが分散され、ネットワーク化されていくような構造は、今の時代の一つの潮流として、他の分野でも見てとることができます。
例えばWeb3.0と呼ばれる世界、特に暗号資産やメタバースに関する業界では、2022年に入って、DAO(Decentralized Autonomous Organization)という組織形態が大きく注目を集めています。
日本語では「分散型自律組織」と訳されることが多いようですが、“Decentralized”と言う単語なので、そのまま受け取れば「脱中央化」で、中央集権的な組織形態ではない、分散型ネットワークの組織モデルということですね。
特徴としては、中央集権的な管理者がおらず参加者全員が平等であり、かつ誰でも自由に活動に参加できること、というように謳われています。
そしてこの概念に通じるものは、組織論で言うと「ティール型」にあたり、日本でも2018年に『ティール組織』が世に出てから、次の組織モデルはこれだ、ということで、新たに組織変革を試みた事例も多かったようです。
ところが、「ティール型」は、少なくとも企業組織においてはなかなか実現困難で、理念ではなく実際の組織構造まで自律分散型にしようとしても、正直うまくいかなかった、という声をよく見聞きします。
時代の方向性としては間違いなく進みつつあるこの流れの中で、私たちのこれからの働き方やコミュニティのあり方を考える上でも、自律分散型ということに関連して思うところを、以下、いくつか書いてみたいと思います。
一つは、『ティール組織』の中で実ははっきり書かれているのですが、目指す組織進化の方向は、「自律分散型の組織」という形にはっきりと「固定される」ものではない、ということです。
言い方を変えると、必ずしも中央集権はダメで、自律分散が良い、という二項対立的な話ではなく、むしろ固定せず、目的に応じて柔軟に、自在に変化できることの大切さが、本の冒頭の方で説かれています。
実際、例えば暗号資産に関するDAOのように投資・投機を主な目的としてデジタルシステム的に運営される組織形態と、法務や財務などの経営責任・社会責任の所在が明確に代表者に特定されている企業組織ではそもそも組織としての前提が全く異なるので、比較してどちらがどうこうと言っても、あまり意味がない気がします。
中央に意思決定が集約されている時の良さもあれば、参加型で取り決められることの良さもあるので、大事なのは、どんな目的や効果を理想に見据えてそのシステムを採っているのか、ということでしょう。
また、地域コミュニティのネットワークとして、会社組織的なタテの序列はもうイヤだから、自律分散的なものにしたい、という傾向も、耳にすることが多いです。
昨今の「多様性と包摂」といったキャッチフレーズにも通じるものがあるかもしれませんが、「それぞれ自律的に動きながら、多様性を持った全体として緩やかにつながっていきましょう」という組織・コミュニティスタイルも、きっと増えていくでしょう。
ティール組織では、部分と全体の最適なはたらきのメタファーとして有機的な生命体の仕組みで語られるので、まさしく動植物という生命を扱う地域コミュニティなどは、心の面でも親和性が高い概念なのだと思います。
普通に考えても、組織やコミュニティの中では、その方がより、個々の強みや自分らしさを発揮できるので、時代的にも多くの人に受け入れられやすい概念です。
ただ、そのように生命をメタファーにして自律分散型のメリットを語る時、私が思う問題の一つは、そこに、新たな創発や変容、飛躍の意味合いが、あまり直接的に感じ取れないことです。
例えば、心臓は心臓、肺は肺で、それぞれ自律的に働きながら、全体として自分という一つの生命組織を成り立たせてくれています。
しかし、心臓が心臓以上の何かに変容することは当然ありませんし、肺が、肺以上の何かの臓器に飛躍的に変わることも、当然ながらありません。
おかしな例えと思うかもしれませんが、部分と全体の自律分散型の働き合い、という捉え方だけでは、過去の延長ではまったく予測されなかった創発的な変容は含まれていない、ということです。
上記はあくまで一つの例えとしての捉え方ですが、お伝えしたいのは、「自律分散型」を包み込んで、より自在性に富み、かつ創発性のある概念を意識の中に描いてみることが、一歩進んで大事ではないでしょうか、ということです。
ちなみに私の組織論的な整理としては、ティールからヴァイオレットへ、生命から宇宙へ、というメタファーを軸に、次の時代の意識と組織の変容の方向性を提唱していまして、先月、日経主催の企業展示会でもそのまま発信してみました。
宇宙全体を包括して洞察する叡智を悟りの智慧とするなら、そういうところまで踏み込んで次の時代の組織や社会のありようを考えてみて良い時代に、すでに入っているのだと思います。
そこまでいうと、だいぶん突飛な話のように思われる方もあるかもしれませんし、観念的にすぎると思う方もあるかもしれませんが、そもそも、こと日本においては実は取り立てて新奇な話でもないのです。
具体的に考えても、1400年前に聖徳太子は組織をまとめる上で、神道・儒教・仏教の多様性を包摂し融合させた悟りの智慧を活用しようと、はっきりと憲法という明文で「見える化」して、社会変容に当たっています。
さらに遡れば、もともと日本には縄文以来の精神性があり、日本人の心が立ち戻るべき古神道的な「八百万の神々」の調和的世界観があります。
それは、「自律分散型」というよりも、私の言葉でいう「共奏創発型」に相当するもので、部分と全体が重なり合いながら響き合い、そこでは神々の「むすひのはたらき」が、より多彩な創造の階層を織り成していきます。
根源の造化三神から絶え間なく生成化育され続けている宇宙の全体系は「創発の連鎖」のはたらきとも言えるもので、それは、宇宙という壮大な組織体の生成発展のサクセス・ストーリーのようなものです。
日本神話の八百万の神々の物語のように、時に仲違いしたりすることはあっても、一人ひとりの役割や使命、おはたらきがあって、その相互作用の中で、また新たな組織の物語が生み出されてゆく。
そのように絶えず創造され続ける自在な組織やコミュニティのあり方というのは、日本人の長い精神文化の深いところで、ずっと流れ続けてきているもののように思うのです。
こうした視点で考えてみると、昨今の自律分散型モデルのもう一歩先には、日本人の心の原点にある神々の世界観、和の叡智に連なるものが、きっと大切な役割を果たしうるのではないでしょうか。
そういうことを踏まえて、和の叡智を世の中に実装していくためのさまざまな人々の取り組みと意識が響き合っていくことが、DAO的なるものを超えた、次の時代のスタンダードを開いていくのかもしれません。
いかがでしたか?
次の時代の組織のスタンダード。
それは、日本人のDNAに
しっかりと刻み込まれたものなのかもしれませんね。
ティール型や分散型自立組織の次を見据えた、
和の叡智を社会に実装するバイオレット型の組織については、
日経新聞、日経BPが主催した
「ヒューマンキャピタル・ラーニングイノベーション2022」という
東京国際フォーラムで開催されたイベントで
内海さんの会社 ロンズデーライトから発信されました。
そして、
こちらのイベントのオンライン展示が
8月31日まで開催しているようです!
ご興味のある方は下記リンクからご確認ください。
https://events.nikkeibp.co.jp/hcli/2022/info/
また、8月30日には、
「悟りの智慧の企業への実装」に興味を持っていただいた方向けに
無料オンラインセミナーが開催されます。
内海さんから直接お話が聞けるチャンスです!
ぜひこちらもチェックしてみてくださいね。
【開催は8月30日!】
日経HCLI2022出展キャンペーン
"人的資本とBeyond Teal" 無料申し込みフォーム
https://forms.gle/rFXXeiFYsuXHVRcU8
◎参加費:5000円→キャンペーンにつき0円
◎主な内容(予定)